slide_show

2020.10.10 週末おむすびチャンネル vol.22

食と本のおいしい話 週末おむすびチャンネル vol.22

秋も深まり、ごはんがおいしい季節です。今回の週末おむすびチャンネルは「食と本」をテーマに、梅と鮭が読んできた料理本やエッセイのこと、物語に登場するおいしい食描写について話しました。

● 作る? 作らない? レシピ本

 

梅:鮭はレシピ本ってよく読む?

 

鮭:料理雑誌は、昔は親が買ってる『暮しの手帖』とか栗原はるみの『haru_mi』を読んだりしてたよ。自分では、オレンジページの『食べようび』(現在はWeb配信のみ)っていうのをしばらく買ってた!

 

梅:『食べようび』! 鮭、会社で見せてくれたよね(※梅と鮭は以前、同じ会社で働いていた)。カラフルな表紙を覚えてるよ!

 

鮭:手順が全部写真付きでわかりやすかったし、「ペットボトルの蓋は小さじ約1杯」とか教えてくれたりして、料理初心者にぴったりだった。雑誌としても、コラムが充実してたり、フライパンを真上から写すとかデザインも斬新で読んでるだけで楽しかったな。

 

梅:私はレシピ本ってあんまり読まないなあ。思い出すのは、学生の頃にバイト先のシェフにパスタの本格的なレシピ本を借りて、そこに出てくる料理を繰り返し作ってたんだよね。その本で料理を覚えて、なんとなくいろんなものが作れるようになった気がするな。私が使ったなあと思うレシピ本はその1冊だけだよ。もうタイトルも思い出せないけど。鮭はレシピ本を見て、自分でも作ってみるの?

 

鮭:たまに作ってみたりもするけど、たくさんではないかなあ。だいたい読んで作った気になって満足しちゃってる……。

 

梅:料理の本って写真を見るのが楽しいっていうのもあるよね。私は『茨木のり子の献立帖』『向田邦子の暮しの愉しみ』とか持ってるけど、実用というよりは、憧れで買ったな。こんな料理を作ってたんだって知る喜び。

 

鮭:その本から作ったりもする?

 

梅:うーん、ほとんど作らないなあ。結局、作り方はスマホで調べちゃうし、紙媒体で参考にするのは、新聞とか生協のカタログの端っこに載ってるレシピだったりするなあ。でも漫画で『きのう何食べた?』に出てくる料理は、真似していろいろ作ったよ。

 

鮭:ああ、漫画ってなんか作りたくなるね。最近『しょうゆさしの食いしん本』っていう食のエッセイ漫画に出てきた「トマトキムチ納豆そば」っていうの作ってみたよ。

 

梅:へえ、おいしそう! なんだろうね、漫画だと想像が膨らんで作ってみたくなるのかな。レシピ本で完成写真、分量、作り方と、しっかり説明されると逆に作るのに腰が重くなっちゃう。

 

鮭:わかる! そういえば、おむすびブックスでも仕入れてた有元葉子の『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』はよかった。料理する時の感覚の部分が書かれていて、どれも身に付けたいと思うことばかりだったよ。

 

● 物語のおいしい描写

 

梅:私、小説を読んでて、初めて知った食べ物があるよ。絲山秋子の『逃亡くそたわけ』に出てきた「いきなり団子」。熊本の郷土菓子なんだけど、名前もおもしろくて、どんな食べ物なんだろうとすごく気になって。たしか熊本のアンテナショップで見かけて、初めて食べたときは「これか!」と感動したな。今も見つけたら買っちゃう。

 

鮭:面白いね。初めて知った食べ物でいうと、子どもの頃読んだ『長くつ下のピッピ』に「しょうが入りのクッキー」っていうのが出てきて、その頃はまだジンジャークッキーなんて知らなかったから味の想像がつかなかったの覚えてるなあ。

 

梅:確かに子どもの頃って、本を読んでおいしそうな食べ物にたくさん出会ってきた気がするな。あと、食べ物の描写でいうと、吉田修一の『太陽は動かない』っていうスパイ小説に、広東料理を食べるシーンがあるの。足元に料理の残骸が散らばってるボロボロの店で、主人公がビール飲んでゲップしたり脂で手をベトベトにしたりして、なんかすごい汚い! でもそこに出てくる料理が、異様においしそうなんだよね。海老の素揚げとか蒸し鶏とか。今もあれどんな味なんだろうって思うことがある。

 

鮭:へえ! 汚いけどおいしそうなんだ。

 

梅:そう。あと最近読んだ小説だと、戦時中のドイツで食がどんどん貧しくなってきた頃、ベーコンのかけらが入った汁ばっかりのスープを家族で分けたっていう描写があって、辛いシーンだけど、読みながらどこかでおいしそうって思う自分がいたな。

 

鮭:私が最近読んで強烈だったのは袖木麻子の『BUTTER』かなあ。いいバターを使った高カロリーな料理描写がたくさん出てくるんだけど、どれもすごくおいしそうなの。本に出てきたたらこスパゲティは何度も作ったよ。読んでるだけで太りそうな話だった。

 

梅:私もあれを読んで、高いバターを買いたくなったよ。小説って、思いがけずおいしそうな食べ物に出会うことがあるよね。小説の主題とは関係ない、ちょっとした描写だったりするんだけど。結局、ストーリーは忘れて食のシーンだけ覚えてたりして。そもそも食べ物名が出てきただけで、イメージがわいてもうおいしそうって思っちゃうところがあるよね。「湯気の立ったご飯にバターをのせて…」とか、そんな言葉を聞いただけで、唾が出てくるというか。

 

鮭:うんうん。木皿泉の『昨日のカレー、明日のパン』とか、これ絶対おいしいでしょと思って、タイトル買いした。

 

梅:ふふ。わかる。食べ物名が入るだけでイメージがわくよね。きっと、食ってすごく身近なものだから、言葉から得るイメージが豊かなんだよね。そのイメージが、物語のストーリーの中で増幅されていくのかな。あと、子どもを見てると、まだ文字はわからないんだけど、絵本でバナナとかスイカとかの絵があると、パクって食べる真似をするんだよね。1歳過ぎたくらいからやってたかな。そんな小さな頃から、本と食欲の付き合いが始まってるんだよね。

 

鮭:へえ、面白い! 本物と区別がついてないってこと?

 

梅:どうだろ? 本気で食べられるとは思ってないけど、食べる真似をして遊んでるんだろうね。実際にはないのに、あるって見立てて、想像の世界で遊んでる。本を読むということの入り口に立ったということなのかなあ。

 

● 「生きること」につながる言葉

 

梅:食のエッセイもたくさん出てるよね。

 

鮭:エッセイは武田百合子の『ことばの食卓』が好きだな。「枇杷」とか、夫が枇杷を食べる様子が生々しくて迫力があって。

 

梅:へえ!『ことばの食卓』、私も持ってるけどそんな印象がなかったな。読んでなかったのかな。(「枇杷」を読んでみる)わ、すごい!夫の食べる枇杷描写。それでもって最後が切ないなあ。

 

鮭:あと最近だと、くどうれいんの『わたしを空腹にしないほうがいい』っていうのもよかった。この本にも枇杷を食べるエピソードが入ってるの。

 

梅:おむすびブックスでも仕入れた本だね。SNSでもよく見かけてた。

 

鮭:作者は盛岡在住で短歌を作ってるんだけど、食べ物への愛がすごい。各エッセイにタイトル的に短歌がついてるんだけどそれもよくて。

 

梅:へえー!今度読んでみよう。私は内田百閒の『御馳走帖』とか『小津安二郎の食卓』とか、昭和を感じる食の本が好きで、見つけるとつい買っちゃうな。あと、エッセイじゃないんだけど、『東京手みやげ 逸品お菓子』っていう本を持ってる。もともと新聞連載で切り抜いて集めてて。料理通信の編集部の人が書いてるんだけど、1つのお菓子が1〜2ページの短い文章で紹介してあって、情報の入れ方も文章のリズムも完璧なの。食べ物について書くときの教科書のように思ってるよ。この本はこの先もずっと持ってるだろうな。

 

鮭:ガイドブック本もいっぱいあるけど、「これだ」っていう一冊に出会えるのっていいね。エッセイだとあと高山なおみの『帰ってから、お腹がすいてもいいようにと思ったのだ。』も好き!

 

梅:料理家になる前の頃のエッセイだよね。今とはだいぶ文章の雰囲気が違う。私、この頃の尖った感じがすごく好きだよ。

 

鮭:うん、日常に食がするっと入り込んでいて、食って生きることなんだなって改めて思ったよ。そういえば私、ストレスが溜まったりすると深夜に衝動的にお菓子を作ることがあって。

 

梅:わかるかも。私も料理しない日が続くと落ち着かない。

 

鮭:料理の効用ってなんかあるんだろうな。

 

梅:今回のおむすびブックスの特集「いのちの糧」に入れた『cook』は、著者が鬱のときに料理をはじめて、ちょっとずつ調子がよくなっていくんだよね。料理は生きることと同じって書いてあった。でもそうだよね、なにか食べないと死んじゃうし、料理はその食べ物を作る行為であって。だから、エッセイでもレシピ本でも、小説の食描写でも、生きることにつながる言葉を読んでるってことなんだよね。

 

鮭:本を読んでおいしそうと思えるのは、元気な証拠だね。

 

梅:ね、おいしい描写を読むのって、体にもなにかしら作用していそう。

 

鮭:食欲のわく本、まだまだたくさんあるよね。これからもおいしい表現に出会っていきたいな。

投稿者: おむすびブックス

back to top