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2020.5.15 週末おむすびチャンネル vol.2

『寺田寅彦 科学者とあたま』おすすめ編 週末おむすびチャンネル vol.2

今回取り上げるのは、科学者や作家の随筆を紹介するSTANDARD BOOKSシリーズの一冊、『寺田寅彦 科学者とあたま』(平凡社)。この本を仕入れた鮭に、おすすめポイントを聞きました。

 

梅:おむすびブックスでも寺田寅彦の本、いろいろ入れてるよね。そもそも、なんで寺田寅彦が好きなの?

 

鮭:寺田寅彦って「身近なものの物理学者」って言われてるんだけど、その身の回りのものを不思議がる感じがおもしろくて好きなんだ。

 

梅:あ、寺田寅彦って物理学者なんだ!

 

鮭:そうそう。身近なものごとに注目してその物理現象を研究してた。随筆をたくさん書いてるんだけど、有名な作品のひとつに「茶わんの湯」っていうのがあって。お茶の湯気を見て、これは雲や霧と同じようなものだって言ってそこから気象の話に続いていく。身近なところから想像を広げて科学の話に展開していく感じが、読んでいてすごく気持ちいい。

 

梅:へえ、気持ちいいんだね!

 

鮭:最初読んだとき、話の広がり方がすごい!と思って。

 

梅:物理に1ミリも興味がない私だけど、それでも興味持てるかな?

 

鮭:うーん、随筆によるのかなあ。私も物理詳しいわけじゃないから、ほんとに難しいところはスッと飛ばしちゃったりもする……。

 

梅:専門的な話にもなったりする?

 

鮭:たまに難しい用語とか計算式が出てきたりするんだけど、でもそういう作品でも導入で興味を持てると思う。あと物理の話ばかりじゃなくて、読書とか日常を書いたものもたくさんあるから。

 

梅:この人は学者としても論文を書いたりしているの?

 

鮭:うん、地球物理学者だったから地震の話とか多い。関東大震災のこととか。「天災は忘れたころにやってくる」って言葉はこの人って言われてるんだ。俳句もやっていて、夏目漱石の弟子だったりもして。

 

梅:夏目漱石に弟子入りしてたんだね。理系の人だけど文才もあるだなんて…

 

鮭:『我輩は猫である』や『三四郎』に寺田寅彦がモデルの登場人物が出てきたりもしてるんだよ。夏目漱石は寺田寅彦によく科学の話を聞いていたみたい。

 

梅:夏目漱石になんで弟子入りしたの?

 

鮭:高校の時の英語の先生が夏目漱石で、それで俳句も教えてもらうようになって弟子入りしたって。どこまで詳しく手ほどきを受けてたのか、ちょっとよくわからないんだけど。

 

梅:身近なところに入口があって、そこから物理の世界に引っ張っていってくれるのかな。例えば鮭は湯気を見たら、「ああ、これって寺田寅彦が書いてたやつだな」って思い出すの?

 

鮭:うん、周りのものに着目するようになる。この湯気! この水滴が! とか。私も身近な不思議を見つけるのは楽しいなって思うところはあるけど、私はそこから寺田寅彦みたいに広がらない。変なの、で終わっちゃう。だからそこから広げる力がうらやましくていいなと思って。頭の中でぐるぐる想像が膨らんで、科学的根拠を混ぜながら話が展開していくその想像力と分析力のバランスがすごい。

 

梅:前に寺田寅彦を「めんどくさい人」って言ってたよね。あれはなんでなの?

 

鮭:なんか独自の理屈っぽさがあるというか。しかもそこに好奇心が加わってるから、一緒に道歩いたりとかしたら、いろんなものに注目して持論を述べて……ぜんぜん前に進まなそうなイメージ(笑)。でもだから面白い。めんどくさいはほめ言葉!

 

梅:そうなんだ!

 

鮭:うん。寺田寅彦のTwitterとか見てみたかったな。毎日ぼやいてそう(笑)。

 

梅:今のコロナの事態をなんていっているだろうね。

 

鮭:ああ、聞いてみたい。

 

梅:この本はいくつも随筆が入っているけど、特におすすめってある?

 

鮭:このSTANDARDBOOKSの『科学者とあたま』だと、最初の「線香花火」は展開もわかりやすくておすすめ。その次の「科学者とあたま」も読みやすい。考え方がよくわかると思う。あと「団栗」っていうのは奥さんのことを書いていて心がぎゅっとする。めんどくささが垣間見えて面白かったのは「自画像」。自分の自画像を書いてみる話。個人的に好きなのは「宇宙線」とか「化物の進化」かな。難しいところが出てきたら飛ばしていいと思う。梅が読んだ時にめんどくさいって思うかなあ。楽しみ。

 

梅:わかった、難しかったら飛ばして、とにかく最後まで読んでみる! いま話を聞いて、科学って自分に接点がないって思っていたけど、日常で科学の世界に触れてるんだね。

 

鮭:お茶の湯気が雲と霧と同じだなんて、そこに結びつく!? って思って。「茶わんの湯」は『科学者とあたま』には入ってないけど、もしあれだったら青空文庫にあると思うから。

 

梅:わかった、それも読んでみる! そういえば昔、小学校の理科の時間に男の子が先生に質問してたんだけど、やかんでお湯を沸かしたら水蒸気がやかんの口からちょっと浮いて出てるって言ってて、よくそんなとこ見てたなって。いま思い出した。

 

鮭:その子みたい! ラジオの「子ども科学電話相談」ってあるでしょ? あれは子どもの質問に先生が答えるけど、寺田寅彦は自分で答えを導き出せるから、電話相談の質問と回答を一人でやっている感じ。いろんなものに興味が持てると、本当に毎日ワクワクする。それって大人になると結構薄れちゃうような気もして。

 

梅:「なんで?」って思うことは大事だよね。世の中のあらゆることを鵜呑みにせずに。

 

鮭:まさに作品の中で、科学者は頭がいいだけじゃだめ。同時に「あたまが悪くなくてはいけない」って言ってた。頭のいい人はパパパって答えを導き出せるから疑問を持たないけど肝心なものを見落とす恐れがあるって。身の回りをよく見て少しでも不思議に思ったら、答えが出なくても、妄想するだけでも、世界が広がるはず!

 

この本を読んだあとで感想を語り合う『寺田寅彦 科学者とあたま』<感想編>は、5月末に公開します。来週の「週末おむすびチャンネル」は、『三つ編み』<感想編>をお届けします!

投稿者: おむすびブックス

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