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2020.5.6 週末おむすびチャンネル vol.1

『三つ編み』おすすめ編 週末おむすびチャンネル vol.1

「週末おむすびチャンネル」1回目に取り上げるのは、フランスでベストセラーとなった小説『三つ編み』(早川書房)。今回は、この本を仕入れた梅が、鮭におすすめポイントを紹介する <おすすめ編> をお届けします。

 

 

梅:よし、じゃあ『三つ編み』からね。

 

鮭:うん。

 

梅:鮭におすすめだと思うのは、前に海外文学が読みづらいって言ってたでしょ。登場人物がカタカナの名前だと、それだけで読みづらく感じるって。でも、これはすごく読みやすくて。翻訳がうまいのか元の文章がそうなのかわかんないけど、一文が短くて、リズムよくどんどん読めるの。作者が女性の映画監督なんだけど、どこか脚本のト書きのようなところがあるかも。情景が浮かんでくるような。

 

鮭:へえ。寺田寅彦も視覚の人って言われてるだけど、似てるかな(註:鮭のおすすめ本は寺田寅彦で、『三つ編み』の前に寺田寅彦の話をしていた)。

 

梅:そうなんだ! 似てるのかな。一文が短いから勢いがあるんだよね。一気に2時間くらいで読めるんじゃないかな。

 

鮭:(中をパラパラめくって)あ、ページもぎっしりじゃないんだ。行間も空いている。

 

梅:そうそう。

 

鮭:物語は、三人の女性のそれぞれの人生が描かれる?

 

梅:うん、インドの女性とカナダの女性、イタリアの女性の物語がちょっとずつ進んでいくんだけど、その中でも特にインドの女性の置かれた境遇がかなり悲惨で。インドのカースト制の最下層でダリットって呼ばれてるんだけど、そこに属する女性なんだよね。ダリットの女性に与えられている仕事は人の家の汲み取りで、糞便を素手でかき出すの。道具とか使うんじゃなくて、素手で。主人公は、自分の母親からその仕事を受け継いで、集落の家々を回って、糞便をかき出して、しかもそれでお金がもらえるんじゃなくて、残飯をもらって食べていくっていう。スカーフで顔を隠して車道の端っこを歩いて、1日20軒くらいの家をまわって汲み取りをして暮らしてるの。

 

鮭:(検索して)本当だ、最下層がダリット。

 

梅:著者がインドの現状をリサーチして書いているから、この現実がほんとにインドであるっていうのを知るきっかけにもなるんだよね。もっと物語が進んでいくと、インドの輪廻転生の考え方とか、どういう宗教観に基づいてこういう悲惨な状況を受け入れ生きているのかというのがわかるんだけど、どれほど女性が差別されているかが、もうね、えげつない。こんなことが現代であるのかというのが。すごくびっくりした。

 

鮭:へえ!

 

梅:あとの主人公は、カナダとイタリアの、また全然違う環境に置かれている女性なの。カナダなんてキャリアウーマンの女性弁護士。それで、ちょっと困難なことが起こるんだけど。

 

鮭:三人の女性の人生が交錯していく物語なんですよね。

 

梅:うん、その交錯の仕方も楽しんでほしい。読んでるうちに、あ、こんなふうに重なるのって。

 

鮭:タイトル、キーワードかな。

 

梅:そうだね。そうそう。

 

鮭:私、たぶん梅に聞かなかったら、こういう、人種とか社会問題を扱う感じの本ってあまり手にとらなかったと思う。

 

梅:小説で読むと登場人物の主観で描かれていたりするから、より感情がダイレクトに伝わってくるっていうか、登場人物と一体になれる感じがあるんだよね。それって、映画よりも小説の方がある気がする。だからインドの悲惨さは本当に…感情移入しちゃって結構辛い。淡々とそれを書いているんだけど、自分が汲み取りしているみたいな気持ちになる。

 

鮭:そんなに!

 

梅:インドの汲み取りは忘れられない。

 

鮭:去年読んだの?

 

梅:たまたま図書館で見つけて、あ、話題になってた本だと思ってパッと手に取ったの。

 

鮭:じゃあ内容とか特に?

 

梅:うん、何にも知らずに。三人の女性が主人公ってことも知らずに。

 

鮭:へえ、そうなんだ!

 

梅:辛いけど、読後感はいいよ。最後は状況が変わるから、って、こんなこと言っていいのかな。

 

鮭:ふふ、暗い終わり方じゃない?

 

梅:うん、本当に、人生に光がさしてくるというか、それぞれの登場人物の状況が変わっていくし、それを読んでいる自分の人生にも光がさしてくるような気持ちに一瞬なる。これを読むと。

 

鮭:本当に? 今すぐ読みたい!

 

梅:例えばさ、女性の自分探しのストーリーって、悩んでた主人公がありのままの私でいいんだっていうのを、電車の窓から空を見ながら急にフッと気づくような…なんていうんだろう、行動しなくても都合よく状況が変化して気づきを得る話もあるじゃない。でもこれはとにかく主人公が行動する、行動しながら自分で掴み取っていく、自分で動いて環境を変えようとする力強さみたいなものにも勇気をもらえるんだよね。あんまり中身を言うと面白くないと思うから、とにかく読んでみて!

 

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『三つ編み』をおすすめされた鮭が、読んでみた感想を話す<感想編>は5月中旬に公開予定です。

投稿者: おむすびブックス

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