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2020.6.26 週末おむすびチャンネル vol.8

『ある晴れた夏の朝』感想編 週末おむすびチャンネル vol.8

『ある晴れた夏の朝』(小手鞠るい著/偕成社)は、8人のアメリカの高校生が夏休みを利用して、広島と長崎に落とされた原爆について、肯定派と否定派に分かれて討論する物語。前回のおすすめ編を経て、この物語を読んだ鮭が梅と感想を語り合います。

 

梅(おすすめした人)

鮭(読んでみた人)

前回の『ある晴れた夏の朝』おすすめ編はこちら

 

梅:どうだった?

 

鮭:すごく読みやすかった。勉強になったし読んだあとものすごく考えさせられたよ。8人のバックグラウンドも全然違っていて、いろんな情報が詰まってて。

 

梅:メンバーの出自の違いが、物語にうまく活きてたよね。

 

鮭:原爆は当たり前に否定だと思っていたけど、最初に「学校では『原爆投下は、戦争を終わらせるために必要だった』と教わったよな」っていう発言があって、まずアメリカではそう教わるっていうのが衝撃だった。

 

梅:アメリカではそう思ってる人、たくさんいるんだろうね。

 

鮭:うん。私、今まで原爆について深く考えてこなかったのもあって、今回4つのラウンドで肯定派と否定派それぞれの意見を読むたびに、なるほどって自分の気持ちがどっちにも引っ張られてグラグラした。特に肯定派の意見は新鮮で、ああ、そんな考え方もあるんだ、原爆はなくさなくてもいいのかもしれないって。

 

梅:ほんと!なくさなくてもいい?

 

鮭:う、うん……最終的には否定の気持ちで終わったけど、でも結構最後の方まで肯定派に引っ張られてしまったよ。肯定派、みんなきっぱり主張してディベートがうまいんだよなあ。

 

梅:たしかに、みんな自分の意見にすごく自信を持ってるし。

 

鮭:第1ラウンドで、肯定派のリーダー・スノーマンの「ナチス・ドイツのような絶対悪が台頭してくれば、それに立ち向かうためには、強い軍が必要です。ナチス・ドイツと同盟を結んでいる国があれば、その国を叩きつぶすために、原爆が必要です」っていう意見、発言は過激すぎるけど、今後またナチスみたいに過激な組織が現れた時、たしかにどうしたらいいんだろうって。もちろん落とすのは絶対にだめだけど、原爆をちらつかせて恐怖を与えることは、時には必要なのかもしれないって思っちゃった。核の抑止力?

 

梅:核兵器を肯定している人はそういう主張だよね。

 

鮭:当時の日本も過激な組織になっちゃってたんだなって思った。第2ラウンドで原爆肯定派のエミリーが日本の国家総動員法を持ち出して、「当時の日本には、国民全員がひとり残らず、女も老人も子どもも兵士となって、鬼のようなアメリカ兵と戦うべし、そういう法律がありました」って。国民全員が兵士なんてもちろんそんなことはないけど、でもきっとそうしようとはしていて。

 

梅:教育でも洗脳してたしね。

 

鮭:洗脳して、力を合わせれば勝てるってたくさんの人が信じていたんだよね。お国のためって。

 

梅:でも、実際は全員が戦争に前のめりじゃなくて、戦争反対で投獄死した人もいるし、賛成と反対の中間の人もいたと思うし、いろんな人がいるよね。だからエミリーの主張は極端だよね。「広島と長崎の人たちは当時、ひとり残らず兵士だった」って、だから殺されても当然って、それは違うって思った。

 

鮭:うん、個人個人の意見は違ってグラデーションがあるのはわかるし、エミリー極端すぎるって私も思ったんだけど、でもアメリカから見たら日本はこう見えてたんだなって思っちゃった。もちろんアメリカにもグラデーションはあるんだけど。

 

梅:たしかにアメリカから見たら。

 

鮭:これってナチスもそうだっただろうし。洗脳って怖い。過激なエミリーが「『罪のない人々』とは、いったいどういう人たちなのか、それについて、原爆否定派にもっとよく考えてみてもらいたい」って言ってて。エミリーの主張は、被爆者イコール罪もない人たちではない、一人残らず兵士だったのだからって内容でその意見には反対だけど、でも洗脳されて知らずのうちに加担してしまった場合も完全な無実と本当に言えるのか……ああだめだ、肯定派に引っ張られてる……引き戻してほしい。

 

梅:なんだろう、加担したことを罰するんじゃなくて、加担させない仕組みを考えなきゃいけないんじゃないかなあ。過激な組織をつぶせるのは核兵器じゃなくて、独裁者に引きつけられない社会なんじゃない? たぶん、ヒトラーとか独裁者が生まれる根本には人々の不満があって、それを独裁者は例えば他国のせいだって不満の矛先を逸らして、煽って、民衆を味方につける。だからさ、一人の過激の思想を持った人が出てきても、「え、何言ってんの?」ってみんなが思えば、独裁者にならずに、ただの変な人で終わるよね。核兵器で脅しても、根本の解決にはならなくて。

 

鮭:ああ、そうだ。独裁者だって不満がなければ独裁しないだろうし。

 

梅:あと、例えば自爆テロは死を恐れてないから、核兵器じゃ抑止力にならなくない? 死ぬことで自分の信じる神に貢献する、俺は死んで一人でも多く殺すんだって思ってる人に、死は脅しにならない。冷戦時代と違って、今は自爆テロが戦争の火種になってたりするじゃない? 今の戦争の構造に核兵器が効果的かっていうと、またちょっと違うような気がする。

 

鮭:あそっか……だめだ、私洗脳されやすいんだと思う。それって無知からくる。戦争についてよく知らずに考えてもこなかったから、気持ちが流されてぐらついちゃうんだ。

 

梅:私は否定派の主張で、アメリカが日本に原爆を落とした背景に人種差別があったってとこにハッとしたな。作戦じゃなくて差別。差別されてたのかって。

 

鮭:ああ! あと人体実験だったっていうのも腑に落ちた。広島と長崎に落とされた原爆の原料が違うっていうのを知って。すごい威力の兵器を作った、作ったら試したくなるっていう思考がなんかシンプルで納得してしまった。その背景にも人種差別はあるし。核兵器がなくても平和に暮らせる世界……今って核兵器があるから戦争になってないのかな?

 

梅:そんなことないと思う。原発と一緒じゃない? 核兵器をあれだけたくさん作って、あと戻りができないんだと思うなあ。

 

鮭:なんかさ、世界に1つでよくない? 1つだけ持ってて、どこかの国で過激派が出てきた時は世界中が協力して、核兵器あるんだぞと交渉していくみたいな。

 

梅:1個もあっちゃダメだよ! うーんと、核兵器を持ってるんだぞって威嚇するのも、使うっていう前提がないと抑止力になんないじゃん、だから使わない前提で威嚇するのは矛盾しているよね。あと、例えばさ、地震と津波で原発事故が起きたけど、核兵器がそうならない可能性はゼロじゃないよね。核施設が爆撃されたり、そうじゃなくても、誤作動を起こしたりとか。

 

鮭:あ、あるある。こわい。絶対にだめだ! 核である必要まったくない。

 

梅:結局、恐怖で相手をどうこうしようってのは根本の解決にはならない。やられて、仕返しして、やられて、これ繰り返してたら、永遠に終わらない。

 

鮭:うんうん。やっぱり核兵器いらない! 事故危険だし、そもそも武器をもって恐怖で落ち着かせるってほんと意味がないね。なかった。だから私たちは、恐怖でない形で相手を沈める方法を見つけなきゃいけないんだ。

 

梅:でも、これって物語だから、ここまで「エミリー違うよ!」とか「そう言われてみれば」とか、あれこれ言いたくなるし、考えるんだよね。

 

鮭:うん、普通の論文とかだったら、こんなに肯定派の主張に流されてなかったと思う。物語だから私の感情もグラグラした。

 

梅:登場人物に背景があって、ストーリーがあるから、読みながら感情も動くんだよね。だからそれぞれの主張が胸にくる。

 

鮭:そうそう。日本以外の視点に触れられたのほんと新鮮だった。ちゃんと知らなきゃ、俯瞰で考えなきゃって思わせてくれる。戦争の背景を知って、始まり芽を摘まないとまたいつどこで起こるかわからない。それが人種差別からくるものなのか。なんで人種差別してしまうのかとか。

 

梅:原爆投下の背景には人種差別があって、人種差別は未だになくならなくて。ほんと、知りたいし考えたい。知識がないと、今話しててもそうなんだけど、何もかもが漠として……そういえば小学校の時、進研ゼミの教材で「どうしたら戦争をなくせるんだろう」っていう問いがあったんだけど、答えが、まずは友達と仲良くしようって書いてあったんだよね。それ見た時に、さすがに子供騙しというか、いや、そういうことなの!? って思ったんだけど、なんか、今いろいろ話してたら、結局そこなのかなって気もしてきた。

 

鮭:うんうん。アメリカ人の友達がいたとして、戦争ってその友達が敵になっちゃうってことだもんね。それはやだ。

 

梅:そういうシンプルなことに行き着くのかな。でもそれに加えて知識がないと、例えばその友達に裏切られただけで、アメリカ人全員憎いってなっちゃうかもしれない。教養とか、歴史の勉強は必要で。

 

鮭:うん、絶対必要。本の中でも「差別と偏見は無知からくる」っていってたけど本当にそう。違うものだと知って認め合うことも大切だよね。否定派の主人公のお父さんが「ある人を人種によって『こういう人だ』と決めつけたりするのは、ひじょうに危険だし、まちがっている」っていったけどそれが全てのような気もするな。自分の常識に当てはめて考えない。

 

梅:あとは、人間はこういう時に差別してしまう生き物だってことを学ぶっていうことなのかな。人間はそういう弱い生き物なんだっていうのを、学んで自戒をするのかな。

 

鮭:うんうん。差別の根本には恐怖心があって、知ることでその恐怖心を取り除くこともできるかもしれない。

 

梅:あとさ、そこに加えて、例えば武器を輸出すると儲かる大企業が国と繋がってたり、個人ではどうしようもない国の事情も絡んできて、そこに巧妙に巻き込まれちゃうんじゃないかな、国民が。

 

鮭:無知は本当に怖い!巧妙に巻き込まれる。

 

梅:今回の検察庁法改正は止められたけど、今まではもっと巧妙に、権力者は自分の都合のいいように法律を改竄して、気がついたら戦争してるみたいな。

 

鮭:今はTwitterあってよかった。Twitter上でああじゃないか、こうじゃないかって議論のやりとりもわかるし。いろんな意見があってわからなくなったり、自分と似た意見ばかり追ってしまう恐れもあるけど、でも考えるきっかけになる。今回の法案もインターネットなかったら通ってたよね。

 

梅:うん、知らないうちに通ってたよね。

 

 

(注:ここでいったん終わったのですが、どうにも消化不良に感じ、翌週改めて感想編の続きを話しました。ここからはその内容です)

 

梅:もうちょっと感想編の続きをやりたいんだけどいいかな? 前回、うまく言えない自分に心底がっかりして。

 

鮭:うんうん。

 

梅:『ある晴れた夏の朝』は最後に、これまでの議論を経て一人ずつ意見を発表するじゃない? 肯定派のスノーマンは最後まで「核兵器は平和維持のためにこそ存在している」って主張を崩さないんだよね。「アメリカはこれ以上、核兵器は使用しない。ただ、保持しているだけです。これもまた、平和を想像するための行動の一環である、とは言えないでしょうか」。それで前回、鮭が言っていたのと共通しているけど、「今後、平和を脅かそうとする国家や独裁主義者が現れたとき、それを誰が、何が、止められるのか。(略)核兵器は平和の実現に、ひと役もふた役も買っている」と。

 

鮭:私はスノーマンのその意見に引っ張られてたんだ。最初はスノーマン寄りだったけど、でも原爆の背景には人種差別があったし、梅の暴動を恐怖心で抑え込むのは意味ないって意見も聞いて最終的には肯定派のナオミの気持ち。原爆を落としたのは明らかな間違いだったし、「平和を創造するためには人種差別や偏見をなくしていかなくてはならない。そしてそのためにはよその国の言語や、他民族の文化を理解していかなくてはならない」

 

梅:この本の討論会は、第4回が最終ラウンドだけど、今日は勝手に第5ラウンドで肯定派スノーマンに反論したいなと思って。ネットで今の核抑止論の流れとか調べただけの付け焼き刃なんだけど、果たしてこれでスノーマンを論破できるのか。

 

鮭:じゃあ、私が半分スノーマンになって。

 

梅:そうそう、聞いてみてほしいな。まず、反論の一つめが、核を保持すること自体にリスクがあるっていうこと。今って核兵器を持っている軍事施設がサイバー攻撃を受ける可能性が危惧されているんだって。サイバー攻撃で核兵器のコントロールシステムに不正侵入されて投下ボタンを押しちゃうとか、そういう危険性がある。

 

鮭:ええ!

 

梅:持ってるだけで、世界中が危険に晒されてる。特に核兵器がテロリストの手に渡っちゃう可能性もある。

 

鮭:こわい!

 

梅:あとは、前も言ったけど、自然災害から本当に核を持っている軍事施設を守れるのか。想定外のサイクロンとか来たらどうなるの、ってのも心配だし。

 

鮭:うんうん、原発もそうだもんね。

 

梅:あとね、調べてて、えって思ったのが、過去にアメリカがけっこうな数の核兵器を無くしているの。平和のために保持するどころか、そもそもきちんと管理できてない。これ、2016年にBBCの記事にあったんだけど、冷戦時代に核兵器を積んだ飛行機が嵐に遭って行方がわからなくなったことが何回かあったらしくて、その中の1個を海でダイバーが発見してた。それはたまたま爆発しない状態だったけど、例えばスノーマンの彼女が海にダイビングに行って、行方不明になってた核兵器に触れて死んだら、あなたそれは平和のための尊い犠牲と言えるんですか、って。

 

鮭:言えない!

 

梅:それで反論二つめ、国際政治の教授が言ってたんだけど、核兵器を平和のために持つって、やっぱり現代ではもう無理がある。反撃するぞって脅すことで攻撃を未然に防ぐっていう論旨だったら、永遠に軍拡競争が終わらないし、国際的にも緊張が広がり続けるだけだって。

 

鮭:なるほど。

 

梅:2017年には核兵器禁止条約もできたんだけど、でも日本は参加してないんだよね。これはショックだったわ。それで、私が思ったのは、未だに核兵器を肯定するのは、平和のためじゃなくて、人間の欲なんじゃないかと。武器製造に関わる企業が利益を得たい、それから、まだどこにもない核兵器を俺が開発するんだっていう研究者の欲、あと権力者は、これだけ持ってるんだぜって誇示したい、そういう所有欲があるんじゃないかって。だからスノーマンの言う「平和のため」は都合のいい言い訳なんだよ。どうだろ?スノーマン、これで納得してくれるかな。

 

鮭:たじろぐ! でも先日の話に戻っちゃうんだけど、じゃあ今もしまたヒトラーみたいな人が出てきた場合、その人をどう制したら平和を維持していくことができるだろう。スノーマンはそこで核の抑止力って言ってるけど核じゃなくて他の方法で。そこさえ見つかれば核兵器を全廃することができる……

 

梅:そうねえ……一度権力をもたせたら、どんなにおかしなこと言ってても、国民は従わざるを得ない状況になるんだよね。それで国全体が他の国から敵視される。じゃあ、どうしたら状況を変えられるかってことか……香港でデモがあったみたいな感じで誰かが「こんなのおかしくない?」って言い始める、それでこんな国やだよねっていう意見が国内で蔓延すれば変わるのかな。

 

鮭:この前の検察庁法改正案もTwitterから始まったことで、もしも第二次世界大戦中にTwitterがあったら、国家総動員法が通って竹槍を持つことへの疑問が広がったかもしれない。

 

梅:うん、自由に意見を言える場があれば思考停止にならない。例えば竹槍を持って戦えって言われた時点で「何言ってんだ」っていう意見が噴出して、そんな法律は廃案だ!って。

 

鮭:そうそう、ハッシュタグ「#国家総動員法廃案」って。

 

梅:「#竹槍では戦えません」

 

鮭:当時の情報源ってラジオや新聞と、あとは身の回りの人と。学校の先生が言ったことも信じちゃうし、それが偏ってるなんて気づかないよね。

 

梅:うん。でもなかには気づいてる人もいて、だから自由に意見が言えれば……第二次世界大戦の原因って、第一次世界大戦でドイツが負けて莫大な賠償金を払わなきゃいけなくなって生活が苦しくなって、そこにナチスが具体策を持って来たからヒーローが現れたじゃないけど、心を奪われていったんだよね。他国のせいだって敵を作って戦争を肯定したけど、その時に例えばTwitterがあったら、ハッシュタグ「#戦争以前に補償だろ」って。

 

鮭:今のコロナ禍だ。

 

梅:だから外に敵を見出して、攻撃的なこと言い始めたら危ないぞって。そういう視点を持たなきゃいけないってことなのかな。

 

鮭:自国でどうにかできないかってみんなで考えたいところだね。

 

梅:やっぱさ、権力者ってすごく欲深くってさ、今回のコロナでも単純に収束に全力を尽くそうとしたら、今のやり方にはなってないよね。

 

鮭:政治家って志ある人たちがなるものじゃないのかな。ある程度権力持つとやっぱり変わっていっちゃうのかなあ。みんなに先生って呼ばれたりして。

 

梅:うん、勘違いするんだよ。昨日読んでた本に、権力はどんな麻薬よりも中毒性があるって書いてあったよ。

 

鮭:うわあ。その辺り考えるともう気持ちがわからなすぎて…私利私欲、そういうのはどうしたらいいんだろう。これって不満からじゃなく、もっともっとって気持ちなんだよねきっと。この本に戻ると、おかしな人が権力を握りはじめて大きな集団になっちゃった時に、スノーマンは原爆を持っていれば最悪それで攻撃するって。でもその前の段階で沈めないといけなくて、だからもうおかしな人が出てきたら集団化する前に、もう殺すしか……あれ?言ってることが過激すぎる……

 

梅:やっぱりそこに戻っちゃう! でもそうね、とにかく権力の座から引きずり降ろさねば……選挙? デモ? でもそれが機能しないとなると……

 

鮭:とにかく仲間ができて組織化される前に支配者の力を弱めることが大切で。軍にならず支配者だけだったらまだ恐怖がない。

 

梅:権力者の言いなりになんなきゃいいんだよね、せめてナンバーツーとか側近が、部下に、上があんなこと言ってるけど、従わなくていいからね、とか裏で言ってくれないかね。

 

鮭:うんうん、理解がある側近がね。適当に聞いとけばいいんじゃない?とか。

 

梅:命令されても、バレないようにやってるフリだけしとこうぜって。

 

鮭:そういう側近にうまく立ち回ってもらいたい。ちょっと思ったのが、ヒトラーってすごく劣等感があったんだよね。権力持った時に激化しちゃうのって、昔やられたことの仕返しじゃないけど、ヒトラーに対してはそれがすごい感じられて。だから劣等感を持たない社会にすることが必要なのかな。難しいけど。

 

梅:なるほど、発端はそこにもあるのか。もし人生のどっかのタイミングで劣等感を解消できるような出来事がひとつでもあったら歴史は変わっていたのかな。なにか素敵な思い出がひとつでも……学校のテストで100点でも……

 

鮭:めっちゃ褒められたり。劣等感や恐怖心がバネになってるとおかしなことになるから、やっぱダメなもので権力を誇示したり、核兵器みたいに恐怖で制圧しようとすることは、何かがこじれてるからよくないんだろうな。ヒトラーの若い頃のエピソードを聞くと少し感情移入しちゃう部分もあって。こんな画家になりたかったんだなーとかって。

 

梅:権力者だってただの人間だもんね。だから、おかしなこと言い出したら、周りが止められなかったのかな。アウシュビッツの計画が出た時点で、いやいや、それはないって誰かが。

 

鮭:ナチスにもTwitterがあれば……

 

梅:でもさ、日本でも関東大震災の後に朝鮮人虐殺があって、それって結局、誰に命令されるでもなく、一般人が殺してしまった。正常な判断だったらありえないデマを人間はある時信じて、行動に移してしまう。思考が停止しちゃう。なんなんだろうね。

 

鮭:恐怖心とか……自分を守るため?

 

梅:追い詰められてるからかな、例えば地震があって、明日の生活どうしようって時に何かを敵と思ったら、みんなで排除しようとしちゃうような、一気にそっちになだれ込むスイッチがあるのかな。

 

鮭:ナチスにTwitterがあればって言ったけど、Twitterがあることでスイッチを入れやすくして、逆に拡大させちゃう可能性もある。そうだよねっていう意見を誰かと共有できたらそれが拡散して、おかしな思想が広がっていくのかな。

 

梅:同調する、共感する、人間の……忖度も一緒なのかな、命令されてもないのに、ヒトラーならそういうだろうって側近が勝手に先回りして。

 

鮭:うん、諸悪の根源は忖度かも。

 

梅:戦争レベルの話から私たちの仕事まで、人間の忖度があらゆるところで問題を起こしているよね。

 

鮭:自分に不満や恐怖心があったり、あれは守らなきゃって思うとそれを守るために攻撃する可能性がある。忖度するのも自分や身の回りの人を守りたかったりするから。

 

梅:今回のコロナでも自粛警察が出動して……これも近い話なのかな、営業しているお店に「辞めろ」って張り紙したりとか。その人なりの正義なのかな、それって。

 

鮭:うんうん、自分は自粛してるのにって。

 

梅:そっか、こっちは我慢しているのになに好き勝手やってんだって気持ちなのか。

 

鮭:あと感染の恐怖も。

 

梅:そうだよね。……なんか、本の感想からずいぶん遠いところに来ちゃった。本の話に戻るけど、作者の小手鞠さんは、スノーマンは核兵器がなかったら世界平和が崩れるって主張で終わらせなくてもよかったわけじゃん。私が作者だったら、最後は核兵器を全員に否定させたくなるだろうなあ。でもそれって、読んだ人に続きを議論して欲しかったのかな。2004年の討論を引き継いで、私たちが次なる議論を。

 

鮭:まんまとしてる!

 

梅:無知を晒しながらしてるよ。

 

鮭:こういうのを考え始めると自分の無知をとことん痛感して、やっぱりちゃんと知って考えるって重要だなって思う。

 

梅:ほんと、話さないと学べない。私も今回、鮭に言おうと思ったから調べたし、うまく言えない不甲斐なさ含め、記憶に残るけど、自分で読んだだけだったら「おもしろかったなあ」で、細かなことはすぐ忘れちゃうと思うよ。やっぱり言葉にするっていうのはすごく大事なんだな。特に、聞いてくれる人の反応を見ながら話すことが。

 

鮭:うんうん、自分の頭だけで考えてたらあらぬ方向にいく可能性もあるもんね。都合のいいことだけ拾って知りたいことだけ聞いて言って。逆の意見も知らないと。

 

梅:それで、事実を根拠として持って相手に球を投げる、そういう議論をしなきゃね。

 

鮭:この本、感想文コンクールの課題図書になってるから中学校でもこの続きやったりしたかな。

 

梅:中学生の意見も聞きたい! あとは虐殺とか差別についても考えたいな。普通の市民が、ナチスになんで通報しちゃうのとかね。権力者じゃなくて、普通の人がやってるもんね。

 

鮭:自分がやる可能性もあるし。その心理が知りたい。昔から変わってないと言えば変わってないのかもしれないね、ナチスも自粛警察も。でも今はTwitterがあったり宇宙に行けるようになったりして技術が進歩してる。それがいいのか悪いのかはわからないけど、技術の進歩がいい解決の糸口になったらいいな。

 

梅:テレビとかネットとか、その後いろんなメディアが登場したけどさ、戦争から学んで、煽る報道をしないとか、規定を作ってるのかな。

 

鮭:うーん、メディアも伝えたい情報だけ切り取ったり、コントロール自在だからいまいち信用しきれない部分ある。

 

梅:それってその方が視聴率を稼げるって思ってるからかな。それとも、もっと裏事情があるのかな、こういう報道をすると何かの放映権が手に入るとか便宜をはかってもらえるとか。

 

鮭:ね、国からお達しが出てたりするのかな。あとは、取材した側がこう見せたいみたいな意思もあったり。

 

梅:例えばテレビ番組で、現場を見てもない人がストーリーを作って、部下がその通りの素材を取ってくるっていうのもありそう。

 

鮭:その通りにしないと上司が怒るから。事件は会議室じゃなくて現場で起きてる!

 

梅:部下も忖度せずに、現場で見たことを、ちゃんと現実はこうでしたよって言わなきゃダメだ。

 

鮭:そうそう、やっぱり上司は現場を知る、部下は忖度しないってことで世界平和が。

 

梅:それだ! 人間が集団になると命令する人とされる人の上下関係が生まれる。だから上の立つほど謙虚になる。命令されても忖度しない。そういう信条を持って仕事するってことなのかな。……簡単に考えすぎかな。たぶんこういうことを書いてる本もたくさんあるだろうし、また読んでいきたいな。

 

 

『ある晴れた夏の朝』をきっかけに、ふくれあがった疑問と知りたい気持ち。もう少し考えてみたく、次回も戦争がテーマの本『戦争とおはぎとグリンピース』(西日本新聞社編)を取り上げます。

投稿者: おむすびブックス

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